今年は桜の開花も早まり、
暖かくなったかと思うと冬の寒暖の差が激しい春となっています。
その分、体調管理も気をつけたいところです。
加えて、この時期は花粉症で悩まされる方も多いのではないでしょうか。
花粉症の薬でお口の中が乾いてしまう…というご経験はありませんか?
常にお口の中を乾燥から守っているのは「唾液」です。口の中に自然にあるものですが、とても大切な働きをしています。今日は、その唾液についてお話したいと思います。
そもそも唾液とは、「三大唾液線( 耳下腺・ 顎下腺・ 舌下腺)」および「小唾液線」から分泌される体液のこと。これらは、血液から作られます。
成分は99.5%が水分。それ以外に含まれているのが有機成分と無機成分です。
種類は様々ですが、
アミラーゼ(酵素)
ラクトフェリン(抗菌物質)
ムチン(タンパク質)
などが挙げられます。
ほとんどが水分ですが、
ただの水ではないのです。
そして、唾液には2種類の性質があることをご存知でしょうか。
それは、サラサラな唾液とネバネバな唾液のこと。
どちらが分泌されるかは、自律神経(交感神経・副交感神経)によって
コントロールされています。
では、実際の生活状況に照らし合わせてみましょう
サラサラな唾液(漿液性唾液[ しょうえきせいだえき ])は、リラックスしているときや食事時に多く分泌されます。こちらの唾液には、唾液アミラーゼなどの消化酵素が多く含まれているため、消化吸収を助けます。また、食べ物を飲み込みやすくしたり、お口の中を中性に保つ性質もあります。
一方、ネバネバな唾液(粘液性唾液)は、緊張状態やイライラしているとき、ストレスを感じるときに分泌されやすい特徴があります。このネバネバの正体はムチンというタンパク質。納豆やオクラにも含まれている成分です。このムチンが細菌を絡めとり体内への侵入を防ぐほか、口の中の粘膜を覆うことにより粘膜が傷つくことを防いだり、粘膜の保湿も行っています。つまり、細菌と戦って、私たちの体を健康に保っているのです。
では、もし口の中から唾液がなくなってしまったら…どんなことになるでしょうか。
みなさんは、想像がつきますか?
挙げられる症状は以下の内容です。
①口内炎になりやすい
②口角炎ができる
③食べ物が飲み込みにくい
④味がよくわからない
⑤舌や唇がひび割れる
⑥カンジダ症になりやすい
⑦会話がしづらい
⑧虫歯・歯肉炎になりやすい
⑨口臭がする
近年、ドライマウス(口腔乾燥症)の人が増加傾向にありますが、
唾液が少なくなる原因はいくつかあります。
一つは生活習慣、環境によるものです。主に、口呼吸である、ストレスを溜めている、口の中が不潔、乾燥した室内にいる、などがありますが、ドライマウスの方は思い当たるところはありませんでしたか?
もう一つ、意外に知られていないのが、睡眠中には唾液の分泌量が減るということです。つまり、日中起きているときに比べると、抗菌効果が減り、細菌の量が増えますので、虫歯が出来やすい環境に近づいてしまうということです。ですから、寝る前の歯みがきはとても大切なんです。みなさんも寝る前には必ず歯を磨きましょう。
そしてもう一つ、病気によるものが原因の場合があります。
外分泌腺の障害によるシェーグレン症候群、身近な病気ですとエイズや糖尿病も唾液の分泌が少なくなります。また、加齢や血圧降下剤やうつ病薬の副作用でも分泌量が低下します。冒頭でお話した、花粉症の薬も同様です。常用薬がある方は、その作用についても注意が必要です。
そして、ここからが大切な内容です!
唾液は私たちの体を健康に保ってくれる働きがあるのです。
①潤滑作用…咀嚼・嚥下・発音を容易にする
②粘膜保護作用…各種の刺激から粘膜が保護される
③咀嚼の補助作用
④自浄作用(洗浄作用)
⑤消化作用
⑥溶解作用…食物中の味質を溶解し、味覚の発言を助ける
⑦緩衝作用…酸・アルカリに対する中和作用・温度の希釈
⑧抗菌作用…細菌を殺したり、抵抗する
⑨排泄作用
⑩再石灰化作用…虫歯になりにくくなる
この機会にぜひ覚えていただきたい項目です。
そして、唾液をたくさん出すために、
みなさんに意識していただきたいのが「よく噛む」ことです。
みなさんは普段、どのぐらい噛んで飲み込んでいるでしょうか。ぜひ数えてみてください。
以前、「噛む回数を増やそう」という記事でもご紹介しましたが、「よく噛む」ことによって唾液線が刺激され、分泌が促進されます。普段の食事で一口につき30回は噛むようにするとよいとされています。これからは気をつけて食事を取りましょう。
歯は、食事をするためになくてはならないものです。
口は、食べ物が最初に通る場所であり、食べ物が私たちの体を作り上げているのです。
日々健康で、明るい毎日を過ごしていただきたい…
それはわたしたち歯科衛生士の願いです。
これからも大切にケアしていきましょう。
【おすすめページ】
口の中が乾く病気 - ドライマウス(口腔乾燥症)
糖尿病でこのような症が現れると聞いたのでびっくりして調べたのですが、安心しました。
by 林 春一郎 (2013-12-13 08:53)
>林 春一郎さん
コメントありがとうございます!
ドライマウスの原因は様々ですが
「よく噛む」のが大切なのはみなさん同じです!
ぜひ「噛む」ことを意識して、毎日お過ごしくださいね。
by 元衛生士 (2013-12-16 10:55)